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名古屋地方裁判所 平成10年(ワ)4783号 判決 1999年8月13日

原告

日新火災海上保険株式会社

被告

高村晃典

主文

一  被告は原告に対し五六万六〇七五円及びこれに対する平成一〇年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は原告に対し金一一三万二一五〇円及びこれに対する平成一〇年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が被告に対し、後記一1の事故につき、民法七〇九条にもとづく物的損害の代位請求及び弁護士費用の請求をする事案である。

一  争いのない事実及び証拠により明らかに認められる事実

1  交通事故の発生

(一) 日時 平成一〇年七月一九日午前二時三五分ころ

(二) 場所 岐阜県加茂郡坂祝町勝山九三五番地の八南西約一〇〇メートル先路上(国道二一号線)

(三) 第一車両 訴外七野博史(以下「訴外七野」という。)運転の自家用普通乗用自動車(岐阜三三の一三〇六)

(四) 第二車両 被告運転の自家用普通乗用自動車

(五) 事故態様 第一車両が北東方面から南西方面に向かって走行中、前方で転回中の第二車両に衝突したもの。

2  訴外七野の損害

車両修理費(甲三) 一〇三万二一五〇円

3  保険契約

原告は、訴外七野との間で、平成一〇年五月一五日、左記の保険契約を締結した(甲一)。

(一) 保険の種類 自家用自動車総合保険

(二) 被保険自動車 第一車両

(三) 保険金額 車両保険金一四五万円

(四) 保険期間 平成一〇年五月一八日午後四時から平成一一年五月一八日午後四時まで

4  原告による保険金支払い

原告は右記保険契約に基づき、訴外七野に対し、左記の通り保険金を支払い、同人の被告に対する同額の損害賠償請求権を代位取得した(甲四)。

平成一〇年八月三一日 車両保険金一〇三万二一五〇円

二  争点

(原告)

1 本件事故は転回車と直進車との事故であり、道路交通法二五条の二第一項に照らし、被告の過失は訴外七野よりも大きい。

2 原告は被告に対して弁護士費用の請求をする。

(被告)

1 本件事故は、訴外七野が追越禁止の交通法規を遵守し、対向車線を走行するという無謀な行為に出なければ発生しなかった事故であるから、訴外七野の一方的な過失によるものである。

2 原告は弁護士費用の損害賠償請求権は代位取得していないから、弁護士費用請求の根拠はない。

第三判断

(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証は、その旨の記載を省略する。)

一  事故態様

1  甲第五号証、証人七野博史の証言(後記信用しない部分を除く)、被告本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。

(一) 本件事故現場は北東と南西を結ぶ木曽川に沿った片側一車線の国道上であり、本件事故現場付近は緩やかなカーブが続き、追越禁止の制限がある。事故現場の北西は山が道路際まで迫っており、その山側路肩には幅約三・五メートルの駐車帯がある。

(二) 被告は友人の車と二台でドライブの途中であり、被告運転の第二車両が先行して事故現場手前(北東)の交差点を右折して本件事故現場方向に走行してきた。しかし、被告は、途中、後続の友人の車が右折後停止したことに気づき、そこへ戻るため反対車線に駐車帯のある本件事故現場で転回を開始した。

(三) 被告は、転回を開始したものの一回で回りきることができず、反対車線上で、駐車帯に車両前部を半分ほど入れて斜めに停止し、再度転回し直そうとしたもののその場で第二車両のエンジンがストップしてしまった。

(四) 第二車両の後続車(赤い車)は、第二車両が転回を開始したことに気づき、車一、二台分ほど離れた位置に停車していた。

(五) 第二車両のエンジンがストップした直後に、第一車両が反対車線上を逆走してきて第二車両の右側後部に衝突した。

(六) 訴外七野は、事故現場北東の信号を先行車(赤い車)に続いて通り過ぎた。そして、漠然と右の先行車は行ってしまったものと考えて前方の注視を欠いていたところ、本件事故現場直前で赤い車が停止しているのを発見し、急ブレーキを踏んだものの間に合わないと考えてハンドルを切って反対車線に入った。そこで初めて第二車両が反対車線上で停止しているのに気づいたが回避することができずに衝突した。

2  証人七野は、第二車両が停止していたのは自車線内であり、ハンドルを切って前方の赤い車を回避して自車線上に戻ったところ、第二車両に衝突したと述べるが、夜間とはいえ、停止している第二車両に気づかないまま自車線に戻り衝突したというのは不自然に過ぎ、第二車両の損傷部位が車両側面後部であることとも整合せず、右の供述は信用することができない。

二  訴外七野及び被告の過失

右に認定の事故態様、特に、被告運転の第二車両は転回途中であったこと、第一車両が反対車線を走行したのは、第二車両の転回を待って停止していた赤い車との衝突を回避するためであったことを考慮すると、基本的に訴外七野よりも被告の過失が大きいものと考えられる。しかしまた、訴外七野には著しい前方不注視があったことも明らかであり、これを考慮すると、訴外七野と被告の過失割合は五〇対五〇とみるのが相当である。

したがって、被告は、原告の代位した損害賠償請求権一〇三万二一五〇円のうち、その五〇パーセントに当たる五一万六〇七五円について責任を負う。

三  弁護士費用

原告は弁済による代位ではなく、固有の請求として弁護士費用を請求するものであるところ、原告は商法六六二条に基づき被告に対する損害賠償請求権を代位取得したものであり、その行使のために本件訴訟を提起したことが明らかである。そこで、弁護士費用は代位取得した債権の性質に照らし、相当額を被告に負担させるのが相当である。そして、右に認定の被告が負担すべき損害の額、弁論の全趣旨により認められる本件の交渉経緯に照らすと、弁護士費用については五万円の範囲で本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当である。

四  結論

以上によれば、原告の請求は、五六万六〇七五円及び保険金支払いの日であることが甲第四号証により認められる平成一〇年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める範囲で理由がある。

(裁判官 堀内照美)

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